包み愛~あなたの胸で眠らせて~
いきなり急用を思い出すとか、よく考えるとおかしい。もしかして、また避けられた?

残されてしまって寂しくなるが、オフィスに着けば、また姿が見れるし、話も出来るだろう。でも、今は並んで歩きたかったな。

……って、そんなことをのんきに考えている場合ではない。私もいつもより遅いのだから、急がないと。

広海くんとは逆に歩く速度が遅くなっていたが、気を取り直してスピードをあげようとしたその時、肩を軽く叩かれる。


「片瀬さん、おはようございますー」

「あ、おはよう」

「なんか顔が暗いですね。朝からなにかありました?」


元気に挨拶してきた星野さんは心配そうな顔を向けた。「ううん」と笑ってみせたけど、星野さんの表情はあまり変わらない。

心配してくれる人に対して、返事が短すぎたかな。もう少し別の言い方をしたらよかったかも。


「行きましょうか。のんびりしてると遅刻しますよ」

「そうね、行こう」

「片瀬さん……」

「なに?」


いつもよりも真面目な顔をして、星野さんな立ち止まった。今のんびりしていたら遅れると話したばかりなのに、どうしたのだろう。
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