時々、スウィート
「あ! 違うんです! これはチョコじゃなくて、同期の子にもらった物で。えーと、実は今日……」

「誕生日だろ?」

「……え?」


知っていて当然と言わんばかりの藤岡さん。
驚きよりも、嬉しさが込み上げてくる。


「だから、忘れものを取りに来た」


藤岡さんに、真っ直ぐ見つめられている。

終始変わらない表情から導きだした彼の意図。


「忘れものって……私?」

「この後予定は?」

「な、ないです!」


私が勢いよく答えると、藤岡さんは頷いてからドアに向かって歩き出した。

私は急いで同期からのプレゼントをバッグに入れ、デスクの下からチョコブランドのロゴの入った袋を手に取ると、小走りで後を追った。



私知ってます。
藤岡さんは人に興味が無いようで、誰よりも周りに気を配っていること。


私知ってます。
冷めてるようで、誰よりも真摯に仕事に向き合っていること。


「藤岡さん、好きです」


私知ってます。


「唐突だな」


普段無表情だけど、時々見せる笑顔がとっても可愛いこと。


「俺もそう思っているから迎えに来た。誕生日おめでとう」



end

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