不器用な殉愛
トレドリオ王家は、元の領土の半分の規模になるが、復興することになった。ヴァレン公爵は、次期、トレドリオ国王だ。
「……あとは、ヒューゲル侯爵か」
ヒューゲル侯爵にもきちんとした褒美を与えねばならないだろう。自分の主を幾度も裏切る彼のやり口には正直腹立たしいものもあるが、彼が南の守りを放棄したからこそ、この城に攻め込む時の犠牲を最小にすることができたのだから。
「旧トレドリオ王家の地に侯爵を置くのは、余計な火種を起こすことになるだろうな——ジュールを追う役を彼に与えることにするか」
このままここにヒューゲル侯爵をいさせたとしても、周囲の反感を買うだけだろう。ならば、王太子ジュールを追う役を与えた方がいい。
あの時、ジュールがなぜディアヌの部屋の扉を破ろうとしていたのかはわからないが、逃げ延びた彼が、どこかで再起を図ろうとしているならば、その芽は早めに摘む必要がある。
「それがよいでしょう。ルディガー様への忠誠心を見せろと言えば、彼としても何も言えないはずです。ああ、そうそう——信用できる見張りが必要でしょう。何人か、一緒に行かせることにします。ジュール王太子の確保は、急務ですからね」
「そうしてくれ」
こうして、新しい国の形が作られ始める。周辺諸国を平定したルディガーが『征服王』と呼ばれるようになったのは、それからすぐのことだった。