不器用な殉愛
 ジゼルは「美しい」と誉めてくれるが、自分ではそうは思わない。沈鬱な表情を消すことのない瞳には覇気がなく、陰気というジュールの言葉も間違いではなかった。

「それは……」

「使い道のない者には価値がない。それが、あの人達の考えだったのだと思います。私も……そう、思います」

 修道院にいた頃は、日々修道女達と同じ生活をしていた。近隣の住民達と交流し、自分の手を動かして作物を作り、家畜の世話をし、ハーブ園の世話をしていた。

 たいしたことはできなかったけれど、それでも——少なくとも、何かの役に立てている実感はあった。

 この城に戻ってきてからは違う。縁談が調わないことから、役立たずと異母兄達からののしられたこともあった。

 父や異母兄達の暴力にさられされる使用人達を助けることもできず。せいぜい、薬を差し出して手当してやることくらい。

 このまま、この城で飼い殺しにされていくのだと——そう、絶望したこともあった。生まれ落ちた時から、望まれなかったことくらいわかっている。

「でも、少なくとも——この城の人達を解放する役にはたてたと思うので、それで十分ですわね。異母兄のことについては——ラマティーヌ修道院のクラーラ院長を頼った方が早いかもしれません」

「ラマティーヌ修道院……クラーラ院長……? ひょっとして、元傭兵の?」
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