不器用な殉愛
「ディアヌ様。そろそろお時間ですから」

「……ええ、そうね。お花をお願いできる?」

 父と異母兄の墓には参らないと決めているが、母と異父姉の墓には、二日に一度行っている。ルディガーは、ディアヌの城なのだから自由に歩き回れと言ってくれるが、ノエルはあまりいい顔をしない。

 ノエルにとって、ディアヌはルディガーの名を利用した小悪女であろうことはわかっている。自分一人が生き残っていることに対し、面白く思っていないことも。

 だから、この城にとどまっている間は、できるだけ身を小さくしていなければならない。余計な軋轢を生まないためにも。

 元トレドリオ王家に仕えていた者達が参拝しているのだろう。母達の墓には、いつもきれいな花がいけられている。

 そこに参拝している人を直接見たことはなかったが、今日はそこに先客がいた。

「ルディガー、いえ、陛下」

 彼と顔を合わせるのは、三日ぶりだったか。胸の奥がきゅっと締め付けられるような気がした。

「そうか。今日は墓参りの日だったな。ノエルにいちいち許可を取る必要もないんだぞ」
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