不器用な殉愛
「その方が、よさそうです。では、修道女達には、元の私の部屋のある区画に寝泊まりしてもらいましょう。私もそちらに戻ります——その方が、いいと思いますから」
顔を合わせるだけで、胸が締め付けられたみたいになる。
「そうだな、好きなようにすればいい」
ルディガーが身をひるがえして、先に歩き始める。通りすがりに、ジゼルの手の中に彼は何かを押し付けた。
「……どうしよう、私」
彼の姿を見送りながら、つぶやいた。顔を合わせたら、合わせただけ気持ちが膨れ上がっていく。
——この想いは、危険だ。
「ジゼル、ラマティーヌ修道院の皆を迎える準備をしましょう。施療院が開かれるのなら、薬も包帯も足りなくなるし、入院する人達の食事の手配もしないとね」
「金銭面については、ノエルに聞け、だそうですよ」
どうやら、立ち去る間際、彼はジゼルに施療院の運営について書いたものを渡したらしい。
「ディアヌ様はアメリア、私は、ジョゼと名乗れと書いてありますよ。名前まで変えるのですね」
「その方が安心だわ……私の手を借りるのが不愉快な人も多いでしょう」
「そんなこと、ありませんよ」
ジゼルはそう言ってくれたけれど、父の悪名がどれほどのものか、身をもって知っている。施療院に入ろうという人達は、困っている人が多いのだから、そこに余計な心労は加えたくなかった。
母が使っていた区域——元の自分の部屋——に戻り、室内の様子を確認して回る。この間の戦の時に破壊された部分も、ルディガーによって、修繕するよう手配されていた。