不器用な殉愛
「……いつまでも続かないと思いますけどね」
ジゼルがぼそりと言う。
「いいの。これは——ディじゃなかったアメリアの身を守るための措置でもあるのだから」
「私の身を……?」
「私達のもう一つの仕事を忘れたわけじゃないでしょう」
「……ああ、そういうこと。私一人じゃ頼りないと思われたと」
ジゼルがわかりやすく頬を膨らませた。彼女の言葉で初めて気づく。修道院の修道女達は、護衛も兼ねていたということに。
「表向きは、交代でここに奉仕活動に来てることになってるけど。護衛は、精神をすり減らす仕事だから」
患者達にも真摯に向き合いながらも、護衛の役につく。それは、彼女達がいくら鍛えられた精神の持ち主であったとしても、困難なことであるのは間違いがなかった。
「あと、クラーラ院長が集めた情報を周囲に怪しまれずにここに持ち込むという役目もあるけれどね」
口々にそう語った修道女達は、交代要員がこちらに入ってくるのを待ち、引継ぎをすませると城を出ていく。
「……お待ちしておりました」
あくまでも、見習い修道女を装って、ディアヌもジゼルも頭を下げた。
交代要員の修道女達が仕事を始めるのを待ち、干していたシーツを取り込んでいたら、ルディガーがひょっこりと顔をのぞかせた。
「何も、問題はないか」
「ありがとうございます」
「俺は、問題はないかと聞いたんだ。なぜ、礼を言うんだ」
「——私に、やるべきことを与えてくださったから、です」
中庭に張られたロープには、大量のシーツが干されている。日光にあてられ、完全に乾いたそれらは、かすかな風に揺れていた。