不器用な殉愛

「ここが、物置なの。隅っこなら、誰にも見られないから」

 物置にはごたごたと多数の品が放り込んである。奥の方には、今は使われていない農工具に家具、それから手前の方には、修道女達が育てたハーブから作られた薬の瓶が並んでいた。

 物置の一番奥までいけば、手前からはほぼ見えない。修道女達が薬を取りに来るにしても、手前の方だけ。

 ここに置いてあるのは、使用頻度が高く、比較的簡単に作ることができる薬ばかりで、厨房の奥にも同じ薬が置いてある。副作用が大きい薬は、また別の場所に厳重に鍵をかけてしまわれている。

「よく、こんな場所を知っていたな」

「私の隠れ家なの。ずっと、ここにいてもいいのよ」

「さすがにそれはまずいだろ。足が治ったらすぐにでも出ていく」

「……そう。そうね」

 ラマティーヌ修道院の修道女達は、皆、ディアヌに優しくしてくれるけれど——友達、ではなかった。ルディガーなら友達になれるかもしれないと思ったのに。

 彼の年齢が、自分より十は上であることも気づいていなかった。

「ええとね、これが傷の薬。それから、これが打ち身の薬。包帯、持ってる?」

「持ってるわけないだろ?」

「それなら、ええと……これを使って」

 ごそごそと服の内側からハンカチを出してルディガーに押し付ける。

 彼はディアヌよりずっと身体が大きいから、パン一切れだけでは足りないだろう。

 けれど、厨房から食料を持ち出してくるのもはばかられるし、どうしたものかと考えてしまう。

「……あ、ジゼルが呼びに来た。勝手にいなくなっては嫌よ? 後でパンを持ってくるから!」

 物置の外から、ジゼルがディアヌを呼ぶ声が聞こえてくる。そう言い残して、物置を出た時には、ルディガーは身体を丸めて眠ろうとしているところのようだった。
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