不器用な殉愛
「どうせ、部屋の外に出るつもりはなかったんだろう。この城に来てから、ほとんどずっとそうだったらしいじゃないか」
「——異母兄達に、不愉快な思いをさせたくなかったので。それに、使用人達も——たぶん、私も、異母兄達と同じような行動をとると思われたのでしょうね」
自分は違うと言ったところで、誰も信じなかったと思う。今だって、『王妃』に施療院での手伝いをするよう話があったのだとしたら、きっと外には出なかった。
「私は、異母兄達よりひどい人間かもしれません。でも——それでも、やるべきことはやったので、満足です」
自分にしいて笑みを作る。ここは、笑っていなければ——笑った顔が崩れそうになって、慌てて背をそむけた。
手を伸ばし、干したシーツを縄から外す。手元で小さくまとめ、傍らに置いていた籠に放り込んだ。背中を向けたままで次のシーツに手を伸ばしたら、ぽんと頭に手が置かれる。
「——無理はするな」
その一言だけで、気持ちをぐらつかせるには十分だった。無理はするな、と言われても——どうしたらいいのかわからない。
「無理なんて、していません。もし、今回の手配をしてくださらなかったら、こうして……外の空気を吸うこともできませんでした。護衛のこともきちんと考えてくださって」
「あれは、護衛のためだけじゃない」
「それも聞いています」
これ以上、気持ちをぐらつかせてはだめだ。わかっているはずなのに、彼の手から温かな何かが流れ込んでくるような気がして振りほどくこともできない。