不器用な殉愛
「ありがとうございます、陛下」
「また、手伝いに来る——見習い殿」
シーツで一杯になった籠を抱きしめるようにしていたら、そっとジゼルが近づいてきた。どうやら、シーツを取り込む手伝いに来たものの、二人の間に割って入ることができなかったらしい。
「ジゼル、どうしよう——私、どんどん弱くなってしまう」
最初に計画を考えた時には、なんとかなると思っていた。二年たった後、速やかに元の場所に戻り、静かに暮らしていければそれでいい、と。
それなのに、ルディガーの側にいるとどんどん気持ちが引きずられる。彼が自分に寄せているのは、かつて同じ場所で一時を共にした。互いの命を助け合ったという感謝の念でしかないのに。
「お望みなら、ここにとどまってもいいんですよ」
ジゼルが、地面に置かれていたもう一つの籠を取り上げる。
「あの方も、ディアヌ様を大切にしてくださる気持ちはお持ちのようですし——本音を言えば、ルディガーのくせに、なんですけどね。ルディガーのくせに、本当に王座を取り戻して迎えに来るから——そこは認めないといけないじゃないですか」
悔し紛れの口調のまま、ジゼルは続ける。けれど、そこには、かつての感情はないみたいだった。昔のディアヌの目には、ルディガーを嫌っているように見えていたのだが。
「あなただって、幸せに暮らしていいんです。いつだって、自分を犠牲にすることばかり考えているから。だから、私達は不安になるんですよ」