不器用な殉愛
「それだけでは、足りませんか? 私達が、ブランシュ様の忘れ形見であるディアヌ様に幸せになってほしいと——そう思っては、いけませんか?」

 強く見つめられて、ルディガーは唇を引き結んだ。

「いや、ブランシュ王妃という人は、たいした人だったのだな」

 そう、返すことしかできなかった。夫を失い、自分も敵にとらえられた。その中で、できる限りのことをしてきたのだろう。身近にいる人達を守るために。

 その姿が、ルディガーの知るディアヌの姿と重なる。

「ディアヌ様だって、幸せになっていいはずだわ——どうして、あの方にばかり。あなたはディアヌ様の幸せのために何ができるの?」

「居場所を作る」

 そう、断言すれば、ジゼルは驚いたように目を丸くした。今の今まで、ルディガーに対して強い姿勢を崩さないでいたというのに。

「居場所って、そんな」

「俺の隣に、居場所を作る」

 そう、ジゼルの前で断言したのは初めてかもしれなかった。今まで、彼女の前でそう断言したことはなかった。予想はしていたかもしれないが、ジゼルは、ルディガーの言葉に呆然としたみたいだった。

「——でも、ディアヌ様の父親は」

「親の代のことだろう。俺がいい、とそう言ってるんだ。だから、こうして施療院で、民と触れ合う機会を作っている——二年後、『アメリア』と『ディアヌ』が同一人物だと知れば、少しは周囲の見方も変わるだろう」

「そこまで、計算していたの……?」
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