不器用な殉愛
夜、眠る直前にまた抜け出して、ルディガーのところにパンと水を届ける。包帯も、修道院の治療室からこっそり持ち出した。
「お前、ここに来てて大丈夫なのか?」
「うん、大丈夫……誰も、私のことは気にしてないから……ええと、今はね」
今は、お祈りをする時間だ。お祈りが終わるまでには部屋に戻ってベッドに入っていないと、騒ぎになってしまう。
翌日も、その翌日も。
修道女達の目を盗んでは、物置小屋へと通った。行くたびに、食べ物や飲み物を持って。
四日目には、ルディガーの怪我もだいぶ回復していた。もう、歩くのには支障はなさそうだ。
「——明日には出ていく。悪かったな——お前の食べ物を奪ってしまって」
ディアヌは、無言で首を横に振る。
食事の時にパンをこっそりポケットにしまって、それから厨房で残り物をさらってくるくらいしかできなかった。
きっと、ここに運んできた食べ物くらいでは、ルディガーには全然足りなかっただろう。最初に会った時より、少し痩せた気がする。
「——そういうこと」
不意に物置の入り口から声がして、ディアヌもルディガーも飛び上がった。そこに立っていたのは、院長だった。
「ええと、これは」
「ここは、女子修道院なのだけれど?」
腰に両手を当てて、こちらを見ている院長の目が怖い。
どの修道女も、彼女には逆らわないのだ。
「そこの坊主、出ておいで。出てこないなら引きずり出すよ」
ジゼルの祖母であるクラーラ院長は、怒ると恐ろしいのだ。
もうすぐ六十になろうかという年齢なのに、クラーラ院長はずいぶん若く見えた。そして、彼女はディアヌの方に厳しい目を向ける。