不器用な殉愛

 血のにじんだそれを、ぐらぐらと煮立った湯の中に入れ、棒でつつく。汚れが落ちたところで、城内を流れる川のところですすぐ。

 けっこうな重労働のはずなのに、彼女がそれに不満を見せているところはなかった。

「アメリア——少し、よいか」

「……はい」

 見習いとしての名前を呼べば、いたたまれないかのように視線を揺らした。絞った洗濯物を入れた籠を、地面に置き、ルディガーの顔を見上げた。

 深い紫色の瞳に、ルディガー自身の顔が映っている。彼女を不安がらせないように、ゆっくりと口角を上げて笑みを作った。

「戦の後始末で、出かけることになった。ひと月くらいで戻ってくるつもりだ。留守の間のことは、ノエルに任せる」

「あの……ジゼルからは、何か聞いていますか?」

「ああ、あの男のことか。問題ない」

 見習い修道女の正体を公表すると脅しをかけてきた男については、すぐに施療院から出した。彼の傷はほぼ治っていたから、そろそろ出ていくよう告げる頃合いではあったのだ。

 余計なことを口にはしないよう、脅しをかけてからノエルの父親のところに送った。あとのことは、今後の彼の様子を見てからの判断だ。

「ご迷惑を、おかけして……私、その、申し訳なくて」

「そのことは、もう言うな——まだ、時期ではないというだけだ。その時期がきたら、きちんと公表する。そして、それはもうすぐだ」

 今回の件を片付けたら、国内の問題の大半が片付く。あとは、ジュールの件さえ片付ければいい。

「俺は、お前とのことを——あきらめたりしない」

 その言葉に、また紫色の瞳が揺れた。
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