不器用な殉愛
「あなたには、あなたの目的があるのではありませんか?」
確証があって、そう続けたわけではない。だが、ヒューゲル侯爵はディアヌの顔をまじまじと見つめただけだった。
「まさか、そのような問いかけをされるとは思いませんでしたよ。そうしているところは、本当にお母上にそっくりだ」
「以前も、そうおっしゃっていましたね。母に生き写しだと」
侯爵がそう言うのなら、母に似ているのだろう。
だが、母と自分の立場はまるで違う。わが子を生かすために自分の身を犠牲にした母。
父を、異母兄を殺させるために、家族を売った自分。
「私と同じ年頃の青年は、皆、お母上に夢中でしたよ。あの方は——本当に美しかった」
侯爵の目が、懐かしそうに細められる。遠い過去を見ているのだろう。
「——失礼しました。あの方も、本当に鋭くていらっしゃった。私が胸のうちに抱え込んでいたことなどお見通しで。あなたも、そのように鋭いところをお持ちなのですね」
「では、何か考えをお持ちでしたのね」
「私は……あの時、陛下の頼みでブランシュ様をお守りするために城に戻った——だが、マクシムの方が早かった。ブランシュ様をお守りするために、私は——あの男の下についた」
彼の言葉が信じられなかった。まさか、母を守るためにヒューゲル侯爵が父のもとについたとは思わなかった。
——裏切者とそしられても、母のために。自分を犠牲にしてきた。まわりからどれだけそしられようと、気しないそぶりで。