不器用な殉愛
彼はどうするのだろうとひやひやしながら、待っていたら、彼はふーっと長いため息をついた。
「わかった。そうさせてもらう」
「いいこと、この修道院には遊んでいる者は必要ないの。治療室でちゃんとした治療を受けたら、働いてもらいますからね」
院長は、ルディガーに警告するように指を振る。
こうして、ルディガーが修道院に滞在することが認められた。
もちろん、永久的に認められたわけではない。一時のこととわかっていても、ディアヌの生活にちょっとだけ変化が起こったのは否定のしようもなかった。
その反面、ジゼルはルディガーのことがあまり好きではないようだった。
クラーラ院長の孫娘であるジゼルは、ディアヌの世話係のような役も兼ねている。
真っ赤な髪を首の後ろで束ねているジゼルは、将来はものすごい美人になるのではないかとディアヌは思っていたけれど、彼女はそれ言われると嫌がる。
「——ほんと、怪しい男」
彼女は、ルディガーに対し警戒心むき出しだった。
ルディガーの方は、そんなジゼルに対してもディアヌとたいして変わりのない態度で接している。ルディガーの方が、ジゼルより少し年上というのもあるのかもしれない。
「ルディガーのこと、嫌いなの?」
「そういうわけじゃ、ないんですけど」
困ったように、ジゼルは眉尻を下げた。
今、二人はルディガーと一緒に庭の一角に腰を下ろしている。ルディガーに字の読み書きを習っているのだ。