不器用な殉愛
ルディガーは意外にも博識で、読めない文字なんてないみたいだった。
文字の書き方を終えたら、今度は剣の稽古だ。まだ、ルディガーは足の怪我が完全に治っていないため、剣の相手をしてくれるのはジゼルだった。
練習用の短い剣を持って、ディアヌはジゼルと向かい合う。
「——えいっ!」
「踏み込みが甘いです、もう一度!」
ジゼルは年齢の割に剣がうまいのだとクラーラ院長は言っていた。修道院にいる他の修道女達が稽古をつけてくれることもあるけれど、ジゼルに教わることが一番多い。
残念ながら、毎日稽古をしてはいるけれど、ディアヌはまったく上達しなかった。たぶん、才能がないのだと思う。
けれど、剣だけは身に着けておけと院長が言うから、毎日しぶしぶ練習していた。
「やあっ——痛いっ!」
もう一度踏み込んだら、したたかに手を打たれた。もちろんジゼルは手加減をしてくれているのだが、打たれたところがじぃんと痺れて痛む。
「ほら、ディアヌ。もう一息だったぞ」
で見ていたルディガーが、ディアヌに声をかける。
「ほんと? 本当に、もう一息だった?」
ディアヌは、ルディガーの方へ笑みを向けた。ルディガーがもう一息だと言ってくれるのなら、本当にそうなのかもしれない。
「な、何がもう一息よ! 変なところで話しかけて姫様の集中を妨げないで」
ルディガーの言葉に、ジゼルがきっと眉を吊り上げた。
やはり、ルディガーとは気が合わないみたいだ。