不器用な殉愛
「こちらにもいろいろと調べる手はあるんだ。国王の息子ではあったが、妾腹のあなたは、ヒューゲル侯爵に養子に出され、侯爵家を継ぐことになった。マクシムはそれに気づいていなかったようだな」
「そうでなければ、私を臣下として抱えたりしなかっただろうな。側に置いておくには危険な人物とも思われたようだが——私が養子に出されたのは生まれてすぐのことだったし、記録もおそらく、戦の最中に失われたのだろう——だが」
ヒューゲル侯爵は、ルディガーの腕の中に抱えられているディアヌを見つめた。それだけでは、侯爵とディアヌの間に血のつながりがあることにはならない。
「侯爵、二歳の娘と三歳の娘の区別はつくか?」
正面切って不意に問われ、侯爵は眉間に皺を寄せた。二歳と三歳——身近に子供がいなければわからないかもしれない。
「ブランシュ王妃は、二人の娘が同時に病に犯された後、死んだ娘と生き残った娘を入れ替えたんだ。トレドリオ王の娘サビーネと、マクシムの娘ディアヌと」
国を失い、夫を失い、夫の仇に婚姻を迫られる中出産したサビーネ。一応、王妃として大切に遇された中で生まれたディアヌ。それが二人の違いとなったのだろうか。
サビーネは年齢の割に小柄で、全体的に発達が遅かった。ディアヌは年齢の割に大柄で、言葉も達者だったという。
「——マクシムは、娘には興味なかったそうだ。さて、病み衰え、やせこけた二人の娘を区別することが彼にできたと思うか?」
「それは——」
ヒューゲル侯爵も言葉を失ったようだった。それを聞いても、ディアヌ自身、自分の置かれている状況が理解できなかったといえば理解できなかったかもしれない。