不器用な殉愛
◇ ◇ ◇
こうして、二十年近くにわたる争乱は終焉を迎えることになった。
命がけで娘を守り、国の再興を願った王妃ブランシュ。
言葉としては伝えられなかった母の願いを受けて、父の敵を討つために奮闘したサビーネ王女。
そして——異父妹にその名を与え、生き延びる場所を作ったディアヌ王女。
三人の女性達の名は、吟遊詩人達によって急激に国中に広められている。
それを最も後押ししたのは、ルディガーかもしれなかった。
積極的に最愛の王妃の歌を作らせている。
悲運の王女、ディアヌ=サビーネ。
今後、彼女の運命はどう変化していくのかと国中の者が固唾をのんで見守っている。
改めて行われることになった婚儀のために、ルディガーの側近であるノエルも、ディアヌの侍女であるジゼルも奔走している。
そんなある日のことだった。
「しかし、クラーラ院長がよくこの秘密を明かさなかったものですね。ディアヌ様があれほど冷たい目で見られているのを知られているのなら、手を打つでしょうに」
感心したように口にしたノエルだったけれど、そこには疑問の色も含まれていた。それを感じ取ったルディガーは軽く肩をすくめる。