不器用な殉愛
 ルディガーがいて、ジゼルがいてくれる。ルディガーが来てくれただけで、ディアヌの生活は見違えるほど明るいものとなった。

「ねえ、ルディガー。いつまでここにいてくれる?」

 そう問いかけたのは、彼がラマティーヌ修道院に来てから、十日ほどが過ぎた頃だった。足の怪我も、もうだいぶよくなっている。

 地面に棒で文字を書き、ディアヌの教師役をつとめてくれていたルディガーは困ったように笑った。

「さて、いつまで——かな。もう少しだけいたいとは思うけどさ」

「ずっといてよ。そうしたら、剣の練習も頑張れるもの」

 自分の身ぐらいは守れと、剣を持たされてはいるが、どうやらディアヌにはそちら方面の才能はなさそうだった。

 どれだけ練習しても、強くはなれない。最悪の時に、自分の身ぐらい守れるようにならねばと思うけれど、そんな時が本当に来るのかどうかもわからない。

「姫様って呼ばれてるってことは、本当はどこかのお城に住んでるんだろ?」

 ジゼルが修道女に呼ばれて行ってしまった隙に、ひそひそとルディガーがささやく。

「だったら、俺がいなくてもちゃんと剣の練習はしておかないと。お姫様っていうのは——いつでも、自分の身を守ることは考えておかないと」
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