不器用な殉愛
「——二年。それでも長いくらいだ」
二年——それだけあれば、なんとかなるというのか。ディアヌは息をついた。
「わが国には女でも王位継承権があります。一族を滅ぼせば、王位を継承するのは私だけ。私とルディガー陛下が結婚すれば、王位の正式な継承権を譲ることができます。形式さえ整えてしまえば、国内の貴族達の反発はある程度抑えることができましょう——」
ディアヌの提案に、男達が息をのむのがわかった。
この提案までは考えていなかった、ということなのだろう。
だが、ルディガーと人生を共に歩むつもりはない。彼にふさわしいのは、光の当たる道だから。
「では、二年たったら、離縁を。私がルディガー陛下に望むのは、国を平定するまでの間、白き婚姻を貫いていただくことです。王位継承権をお渡しした後、離縁してください」
「それでは、お前——いや、あなたにとって何の利益もないではないか」
家族を売り、自分一人生き残っただけではない。ルディガーと婚姻関係を結んでおきながら、自分が売った家臣達と国の再興を目指す。変わり身の早さを他人にどう思われてもいい、というのだろうか。
「父の血が絶たれるのであれば、私の評判など安いものだとは思いませんか?」
ルディガーに向けたのは、完璧な無表情。
彼女の提案に、室内は今度こそ完全に静まり返った。