不器用な殉愛
誓いの言葉を口にし、互いの指に指輪をはめる。それを見守るのは、つまらなそうな顔をしている家臣達だけだった。
結婚をお披露目する宴も開かれたが、ディアヌはその場への出席は断った。自分がいれば、その場の雰囲気を壊してしまうだろうから。
——疲れた。
ジゼルも下がらせてしまって一人、寝室にこもっていたら、ルディガーが音もたてずに寝室に入ってきた。
「白い婚姻で——とお願いしたはずですが」
指にはめた指輪が、急にきつくなったように感じられた。
「それは、二年間だけの約束だ。二年たったら、離縁するなど俺は約束した覚えはない」
「——なっ」
頼むから、そんな目でこちらを見ないでほしい。心の声は、音にはならなかった。
これ以上、見られたら、胸に秘めてきた想いがあふれてしまいそうで懸命に唇を噛む。
「私は、マクシムの娘ですよ。私の存在そのものが、この国にとっては恥部でしょう」
いずれ、歴史家がこの国の歴史を記す時——父の代に建てられ、一代で終わったシュールリトン王国については、一行ですむはずだ。もっとも愚かな男が、国を奪い、そして滅ぼされた、と。
もし、父がもっと国内に目を向けていたならば、また違った繁栄のしかたもあったはずだ。トレドリオ王国、そしてセヴラン王国と二つの国を滅ぼし、その全てを併合した巨大な王国を、わずか五年で作り上げたのだから無能な人間ではなかったはずだ。