不器用な殉愛
「お前を、解放すると決めた。それなのに、お前にまた助けられたな」
申し訳なさそうにルディガーが眉尻を下げて、またディアヌは申し訳ない気分になった。
もっと違うやり方があったのではないかと、その道を選んだ方がよかったのではないかと。
「お前が宣言した期限は二年、だったな」
不意にルディガーが話題を変えて、ディアヌは目をしばたたかせる。自分が、密室に男と二人きりでいるという事実も、頭からは消え失せていた。まっすぐにこちらを見ているルディガーのまなざしに吸い込まれてしまいそうで。
自分は、彼の隣に立つ資格なとないとわかっているのに。
「二年たったら、私はラマティーヌ修道院に戻ります」
「行かせない。二年、待て。二年の間に、ディアヌとの婚姻を正式のものにしても誰にも文句を言わせない程度に足場を固めてやる」
「ルディガー、でも」
あらぬ期待をしそうになって、懸命に気持ちを抑え込んだ。ルディガーが、ディアヌと一緒にいたい——そう思ってくれたのは嬉しい。だが、状況がそれを許してくれないのもまた事実だった。
「お前を、解放するのも目標の一つだったんだ。だから、ここまで来ることができた」
どうして、そんなことを言うのだろう。
彼が修道院を去った後も、彼と過ごしたわずかな日々は心の中で輝いていた。あの場所での生活に不満があったわけではない。
ただ、毎日、目覚め、日々の日課を片付け、剣の稽古や薬の調合のしかたを教わり、決められた時間にお祈りをして一日が終わる。
そんな毎日同じ生活の中で、彼と過ごした日々は強烈な印象を残していったのだ。