不器用な殉愛
「私の財産は、すべて陛下に差し出してしまったの。残っているのは衣服くらいのものよ」
「……元王様もこうなったら、かたなしだな」
昨日、ジゼルと二人、懸命に掘った穴に、男達は遺体を放り込んだ。首が後から放り込まれ、ディアヌは思わず目をそらす。
「家族を売って、自分だけ生き残った王妃様、か——そこまでして、生き残りたいのか?」
男の言葉に、ジゼルが眉を吊り上げた。
「……ええ、そうよ。私は、生き残りたかったの」
「まったく、父親が父親なら、娘も娘だな。気をつけろよ、残ったジュール王太子は、どこかで再起を図っているだろうからな。彼が戻ってきたとしたら、真っ先に殺されるのはお前だろうよ」
「いえ、その前に——」
もし、そうなったら。きっと、その前にノエルがディアヌを始末するだろう。彼にとって、ディアヌの存在は——今のところは目こぼしをして存在を許している。その程度のものでしかないから。
「死んだ後も、このように恨まれるなんて……聞いていて、あまり気分のよいものではないわね」
「姫様は、そこにいてください。こういう仕事をするために私がいるんです」
「いえ、私の——私の家族……いえ、どうなのかしら」
この二人のことを家族なんて、思ったこともなかった。家族と呼べるのは、ラマティーヌ修道院の修道女達だ。
ジゼルが止めるのも聞かず、一緒になって穴に放り込まれた二人の遺体をできるだけまっすぐに伸ばし、首を正しい位置に置いてやる。
二人の顔をこれ以上見ていられなくて、大急ぎで土をかけた。