不器用な殉愛
二人の遺体が完全に埋まってから、そこに目印となる石を置く。誰も、ここに参る人間などいないだろうけれど。
母と異父姉の墓には時々墓参りに行っているが、父と異母兄のところに来るかどうかは、ディアヌ自身にもわからなかった。
城の片隅にでも葬る場所をもらうことができた。それだけを幸いとし、父と兄のことはもう忘れるべきなのかもしれない。
「……戻りましょう」
土を触ったから、手が汚れてしまっている。ジゼルを促したら、彼女は道具を持って先に立った。
「ほら、あの女が王妃だよ」
「ルディガー陛下に自分がふさわしいとでも思っているのかね」
ルディガーがこの城を制圧してから、まだ十日とたっていないはずだ。だが、彼はそのわずかな時間で、城内を完全に味方につけたようだった。
「ディアヌ様が、どんな思いでいたかも知らないくせに」
ジゼルが、声の方向に向けて、悔し紛れに吐き捨てた。
だが、次の瞬間、その声の方から「申し訳ありません!」という謝罪の声が聞こえてきた。
「ディアヌは、俺が選んだ妃だ。俺の判断に、問題があるとでも?」
ディアヌを認めないと、口を開いた者達が平身低頭して謝っている。そこに立っていたのは、ルディガーだった。
「ディアヌをそしるのは、俺の判断に誤りがあると言っているのと同じことだと覚えておけ」
そんなことなんて、する必要ないのに。立ち止まったまま、呆然とその光景を見ていたら、ルディガーはディアヌの存在に気づいたようだった。
大股にこちらに近づいてきた彼は、ジゼルの持っていた道具を取り上げる。
母と異父姉の墓には時々墓参りに行っているが、父と異母兄のところに来るかどうかは、ディアヌ自身にもわからなかった。
城の片隅にでも葬る場所をもらうことができた。それだけを幸いとし、父と兄のことはもう忘れるべきなのかもしれない。
「……戻りましょう」
土を触ったから、手が汚れてしまっている。ジゼルを促したら、彼女は道具を持って先に立った。
「ほら、あの女が王妃だよ」
「ルディガー陛下に自分がふさわしいとでも思っているのかね」
ルディガーがこの城を制圧してから、まだ十日とたっていないはずだ。だが、彼はそのわずかな時間で、城内を完全に味方につけたようだった。
「ディアヌ様が、どんな思いでいたかも知らないくせに」
ジゼルが、声の方向に向けて、悔し紛れに吐き捨てた。
だが、次の瞬間、その声の方から「申し訳ありません!」という謝罪の声が聞こえてきた。
「ディアヌは、俺が選んだ妃だ。俺の判断に、問題があるとでも?」
ディアヌを認めないと、口を開いた者達が平身低頭して謝っている。そこに立っていたのは、ルディガーだった。
「ディアヌをそしるのは、俺の判断に誤りがあると言っているのと同じことだと覚えておけ」
そんなことなんて、する必要ないのに。立ち止まったまま、呆然とその光景を見ていたら、ルディガーはディアヌの存在に気づいたようだった。
大股にこちらに近づいてきた彼は、ジゼルの持っていた道具を取り上げる。