不器用な殉愛
あの時、人払いは許されなかったから、集まっていた全員の前で下着姿をさらしたことになる。あの時のことを思い返せば、羞恥に顔が熱くなった。
「失礼しました」
同じように赤くなったジゼルが、一歩引いてディアヌの後に下がる。
「ノエル、ディアヌのことについては、お前に文句を言われる筋合いはないぞ。俺が、好きなようにする」
「——だが」
まだ、何事か言いかけたノエルだったけれど、ルディガーには逆らえないみたいだった。ルディガーのひとにらみで口を閉じる。
「ノエルに頼みたいことがあるので、一緒に来てもらってもかまいませんか」
「——ああ」
ルディガーが不機嫌な顔になるのは見なかったことにする。そのまま、ノエルを連れてその場を立ち去った。
「頼みたいこととはなんですか」
「頼みたいことがあったわけではありません。あのまま、、あの場にいたらお互いあまり気分がよくないでしょう——ルディガーとあなたの口論は見たくないと思って。ルディガーには適当に話をしておきましょう」
「妙なことを気にするんですね。俺と陛下が口論になろうが、あなたの知ったことではないだろうに」
「あなたは、ルディガーに忠誠を誓っている。あなたのような人が、ルディガーの側にいてくれるのなら——安心でしょう。私のことは、二年間だけ大目に見てはもらえないかしら」
大目に、とノエルはディアヌの言葉を繰り返す。二年後、ここを立ち去る時が来たら——その時は、ノエルの力を借りることになるのかもしれない。
何の脈絡もなく、ふとそう思った。