不器用な殉愛
あの時、死んだ亭主の形見だと院長が投げてよこした剣は、ここに来るまでの間もなんどもルディガーを守ってくれた。
いつか、この借りは絶対に返さなければならない。
「今後も、あの修道院には気を配ってやってくれないか。もし、——万が一、俺が隠れていたことが知られたら、何かあるかもしれない」
「かしこまりました。注意しておきましょう。そして、これからどうなさいますか」
「いったん、この国を離れる。北のランディック王国に伯母上が嫁いでいる。当面はそこを頼り、兵を集め——そして、再起をはかる」
「それがよろしいでしょう。私も、そう進言しようと思っておりました」
ランディック王国の王からは、ろくな手助けが得られないであろうというのもわかっている。だが——最初は傭兵でもいいのだ。
クラーラ院長は、「ブランシュ王妃からのいただきものだ」と言いながらも、ルディガーにいくつかの宝石をあの時持たせてくれた。最初に兵をあげる時、この宝石が助けになってくれる。
——おそらく、彼女の目的は。
ディアヌをあの修道院から解放することなのだろう。
マクシムの血を引いているというだけで、彼女の人生がどれだけ困難なものになるであろうということも容易に想像できた。
今はまだ、幼くて無邪気な少女だけれど、あと五年もすれば自分の立場を理解することになる。