不器用な殉愛
 ルディガーが傭兵「ルディック」として国境の城の守りについてから八年。

 彼の周囲には少しずつ、元の家臣達が集まり始めていた。今は亡きセヴラン王国の再興を願って。

 それと共に、傭兵ルディックの名も知られつつあった。最初のうちは十代の少年に兵を預けるなんてと半信半疑の雇い主も多かったが、ルディガーは彼らの懸念を実績で打ち破ってきた。

 十代の少年だった頃から、恐れることなく、戦のど真ん中に飛び込んでいく。彼の行く先々には血の雨が降り注いだ。『ルディガー王子』ではなく『ルディック』の名に惹かれて集まってきた傭兵もいたくらいだ。

 元セヴラン王国の家臣達も、この城には来ていないもののランディック王国内あるいは旧セヴラン王国内に散らばり、その日のために準備を進めてくれていた。

「——傭兵としての報酬も、だいぶたまってきましたね」

 ノエルがにやにやしながら、報酬の金貨を数えている。「ルディック」は傭兵であり、ルディックを貸してほしいという依頼が『雇い主』のところにくれば、どこの戦場にでも赴く。赤い髪のルディックがかかわった戦は、勝利を収める。ここ数年、そう噂されることも増えてきた。

「それは、大切な軍資金だぞ」

「わかってますって。兵士達の訓練も、そろそろ完成に近づきある。兵を、あげますか」

「いや、まだだ。もう少し——お前の父もどう意見だろう?」

「……かないませんね」

 ノエルは肩をすくめた。ノエルの父が、ルディガーをけしかけるようにとノエルに命じたのだろう。その時の彼の反応を確認しろ、と。
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