不器用な殉愛
「ヒューゲル侯爵には、他の目的もありそうだ。こちらにくみしたところで、あまり信用はできないだろうな」
「そうだと思います。父も、ヒューゲル侯爵と連絡を取るのは最後の最後でいいでしょう」
味方は、一人でも多い方がいい。だが、信頼はしてはならない。おそらく、これから先ルディガーが出会うであろう人々も同じだろう。
「いずれにしても、シュールリトン城に攻め入るのは当分先だし、ヒューゲル侯爵が城に呼び戻されるとも限らないだろう。ま、その時になってから考えればいい」
それから、と思い出したようにルディガーはたずねた。
「今、ディアヌがどうしているのか何か聞いていないか。噂でもいいのだが」
「ほとんど人の前に姿を出すことはないようで。ただ——あの城では珍しく、人の心を持ち合わせている、と。娘を差し出して縁談を調えるつもりが、なかなか調わないのだとか。『征服王』の名に、皆怯えているようです」
「その呼び方はやめろ」
いつの間にか、ルディガーには征服王という名がつけられていた。ルディガーが、マクシムを討ち果たし、シュールリトン王国を、復興したセヴラン王国に組み込むことを望む者が増えていたのだった。