恋雨
雨の日の放課後。
 激しい雨が降っていた。

 私はコンクリートの地面を叩きつける水しぶきを見つめながら、暗い気持ちで前方に霞む校門に目をやった。

6時を越えた今、校内に残るものは私を含めても数えられるぐらいしかいない。

最近この中学校の近辺では変質者が小学生を襲ったという。被害にあった子供は通りがかった大人に助けらて難を逃れたが、犯人はまだ捕まっていない。

そのため私の通う朝日町中学校では五時半になると、下校を促す校内放送が流れ出す。 その放送を合図に部活を終了し、生徒達は下校の準備を始めるのだ。

帰宅部の私がこんな時間まで学校に残っていた事はほとんどといってない。

今日はたまたま図書委員の仕事で本の整理をしていたら、こんな時間になってしまった。

あとチョット、キリがいいところまでやってしまおう……そう思って作業を進め、気付いたらこんな時間になってしまったのだ。

司書の先生が私に気がついて声をかけてくれなかったら、今でも本の整理を続けていたに違いない。

しかし、正面玄関にある下駄箱まで来て私は、かなりのショックを受けることとなる。

傘がない!


いや、正しく言い直そう。

年季の入った傘立てには二本の傘が残されていた。
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