恋雨
ともえの朝
朝のせわしい中、私は母親が準備したトーストを口に運びながら、いつもの『朝のニュース』に視線を奪われていた。

薄型テレビの中ではお天気お姉さんが清々しい笑顔で天気予報を伝えている。

「ともえ、今日は夕方から雨が降るらしいわよ。傘を持っていきなさい」

お天気お姉さんの天気予報を聞いた母親は私に余計な事を言った。

私は母親の言葉には答えず、ダイニングチェアーから立ち上がった。


自分の部屋に戻り、学習机の上に置かれている鞄を背負いながら私の頭の中では『ある事』でいっぱいになっていた。

今日は月の第二週の火曜日だ。

偶然にも私の図書当番の日でもある。

そして、雨。

こんな偶然が重なる日はこれから先来ないかもしれない。

そう考えると私はこのチャンスを逃す気にはならなかった。

「いってきます」

玄関からリビングで忙しくて朝食の片付けをしている母親に声をかけながら、私は傘を持たずに家を出た。
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