恋雨
恋雨
天気予報通りに激しく降り注ぐ雨。

そして、誰もいない学校の正面玄関、屋根の下。

夕闇に沈みそうな風景。

あの日と全くといっていいほど同じシチュエーションだ。

違うのは季節と私の気持ちだけだ。

私は『その時』を待っていた……。

あれから半年。

私の心では塵が積もるように積み重なっていった想いがある。

何も出来ないまま気持ちだけが、どんどん大きくなっていく。

あのときと同じ状況に自分の身を置いたところで何が変わるわけではないのも知っている。

もしかすると小澤くんは委員会が早目に終わって、もう帰ってしまっているかもしれない。

傘立てにたった一本だけ残されている黒い傘にしても小澤くんのものとは限らない。

それでも私は待たずにはいられなかった。

もしもう一度一緒に帰ることが出来たら……今度こそ勇気を出して一歩前に踏み出してみよう。

小澤くんに少しでも近づけるように。



バサリ。


聞き覚えのある音とともに不意に私の隣で黒い傘が開かれた。

き、来た!

「佐々木さん、また雨やどり？」

黒い傘の下で小澤くんが私に声をかけてくる。

運命の女神さまは私の味方についてくれた!

「う、うん。傘を忘れちゃって」
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