恋雨
私自身、小澤くんも話した記憶がない。

「傘、忘れたの?」

声変わり前の少しかすれた声だった。

小澤くんの声ってこんななんだ…それさえも初めて知った。

「忘れたわけじゃないよ」

 少し怒ったような口調になってしまったのは、自分でも分かった。

 小澤くんに八つ当たりしても仕方ないのは分かっているのに尖った口調になってしまった。

私の怒ったような口調に事情を察したのだろう。

特に気を悪くした様子も見せずに「持っていかれちゃったんだ?」も私の今の状況を簡潔に言い表してきた。その上で小澤くんは、その言葉の上に重ねるように「じゃぁさ」と言葉を続けた。

「途中まで一緒に帰る?」

思ってもいなかった申し出に私の方が驚いてしまった。

確かに今の状況だとその申し出は有り難いものだ。

小澤くんがどこに住んでいるかは知らないが家が近ければ濡れる割合比較的少なくてすむかもしれない。

 チョット待って!

男の子と相合い傘で帰るなんて初めての経験じゃないのよぅ。

その相手が小澤くんってどうなの?

小澤くんの親切に対して何てシビアな感情だろう?
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