恋雨
小澤くんとの相合い傘
意外に長い睫毛。

黒くてしっかりした男らしい眉毛。

鼻は高くないけれど、上を向いているわけでもないし、形としては悪くない。

一緒に歩いていても全くと言っていいほど会話がないので、私は隣で黙々と歩いている小澤くんの顔を時々盗み見ては観察していた。

平均的な日本人顔だと思う。

私も整った顔をしているわけではないから、知らない人から見たら、ごく普通の中学生カップルに見えるのかもしれない。

それはどう考えてもあまり嬉しい事ではないけれど。

「何?」

私の視線を感じたのか小澤くんは顔を動かさずに問いかけてきた。

「……意外に近くに住んでいたんだなって思って…」

慌てて誤魔化すように口にした言葉に小澤くんは別段、不信がる事なく「そうだね」と頷いた。

「僕も知らなかった」

小澤くんが私の家から五分とかからない距離に住んでいると知ったのは相合い傘をした直後だった。

「僕は愛宕に住んでいるんだ」

小澤くんが告げた町名は私の家のすぐ隣の町名だった。

 小学校は学区の関係で別の小学校に通う事になるが、距離としては、ほんの目と鼻の先と言って差し支えないだろう。
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