ごめんな。
これは昔から知ってたこと。
紅音は普通に可愛い、女子をそんな目で見たこともない俺もわかっている。
それでも紅音は恋人なんていない、いや、気づいていないだけで昔もいたかもしれないし、今だっているかもしれない。

「そっか。ごめん、引き留めて。」

って言った。可愛らしい声で。

んだと思う、多分。
だって、紅音が言うまで俺は紅音の前にいなかったんだから。

「遅いぞ、宮本。」
190センチはあるだろうか、そんな巨体で見下ろすこの人は
三浦先輩。
三年生でキャプテン、そして厳しい。

「すんません、幼なじみに引き止められてました!」
「ああ、汐崎さん。」
紅音の名前と、俺との関係は入学して紅音が有名になったら、校内では誰もが知ることとなった。
「色恋で練習ををおろそかにするんじゃねぇよ、バカ」
言い放つ先輩。

なんで?

「俺と紅音はそんな関係じゃないですってば!」

「うん、だとしたら汐崎のこと狙ってる男子が可哀想だからな。」
「こんなバスケバカが」と、呟く先輩。
ちょっと、それには傷つくなぁ。

その日も監督の殺人的な練習をした。
もう、汗だく。

気付けばもう、暗くなっている。



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