ホログラム
Kは少し気恥ずかしそうに頬を染めながら、でも、しっかりと強く私の目を見て言った。


「写真家」


「……写真家?」


「そうだ」


「……なんだか、意外ね」


「よく言われる」


Kのイメージとは離れた職業が出てきて、少し拍子抜けしてしまったが、それは不可抗力。どちらかというと、バンドマンだとか、如何にも!な職業が出てきそうな勢いだったのよ。


私のそんな雰囲気を察したKは少しいじけたようにわかってる。と続けた。


「写真なんか、俺の柄じゃないことくらい、分かってる」


「どうして、写真?」


「写真は、その瞬間を切り取るだろう」


「うん」


「その写真はただ単にその場所を映すだけじゃなくて、同時に人の想いも映すんだ。『楽しかった』だとか、『感動した』だとかそんな人の些細な感情から、人生にかかわるほどの大切な思い出までその一枚の写真は残すんだ。写真はたった一枚で、たった一回のシャッターで、それを半永久的に残すことができるんだ」


「それって、すごいことだろう?」


見たこともないような綺麗な微笑みで語るKは、見惚れてしまうほどに輝いていて、私にはまだ眩かった。


「……素敵、だね」


気付けば私の口からそんな言葉がこぼれていた。夢を語るKが綺麗で、格好良くて……羨ましくて。


夢を語ることのできる人はこうも強く輝いているものなのか。


何もできない、しない。夢を語ることすら怖がってできない私が、とても小さくて、情けなくて、惨めだと思った。











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