【短】カンタレラに侵されて。
が、すぐに扇風機は再びあたしに向けて固定された。
ケタケタと笑った先生の手によって。
「いーよいーよ、おまえは暑いんだろ?」
「そうですけど……何がしたいんですか、先生は」
「さあなー。って、昼飯食うんだろ? おれも一緒に食っていいか?」
言葉が詰まってすぐには答えられなかった。
普段の先生は職員室でお昼を食べていて、あたしたちの教室では食べていない。
だからこそ、この誘いは珍しくてすんなりと頭に入ってこなかった。
「……あ。ドウゾドウゾ」
「なーに片言になってんだよ」
クスクスと笑った先生は、弁当を持ってくると言って教室から出ていった。
先生はすぐに戻ってきて、あたしと一緒に弁当を食べた。
ポツリポツリと世間話をしたら、あっという間に会話はなくなってしまった。
外のセミが鳴き叫ぶ声と、お互いに弁当を食べる音だけが残った。
けれども、それが居心地悪いというわけではなく、ただ無性に落ち着けた。