【短】カンタレラに侵されて。
あたしの机の前で、足音は止まる。
ええい、私は起きていませんよー。寝ているだけですよー。
と、狸寝入りが効く相手ではない。
ドスッとあたしの頭にナニかが落ちてきた。
って、人にぶつけていい音じゃなかったよ!?
そしてどうやらあたしに降ってきたのは彼が手にしていた英和辞典だったらしい。
涙目で睨み付ければ、ニヤニヤとした憎たらしい顔が返ってきた。
「……ったあ、なにするんですか。“先生”」
「おまえが寝ていたから起こしてやったんだろー?」
「そーいうの、オーボーって言うんですよ!? この、オーボー教師!!!」
「あーぁ、おまえが頑張ればアイス奢ってやろうと思っていたのに──」
「わーいべんきょうだいすきたのしいなー」
やる気なんてなかった教科書を開く。