夢恋
 心臓の音が、うるさい。
 奏多が真剣に言ってるのか、いつもの女好きが発動しているのかはわからないけど……
 奏多の腕、震えてる。
 
「奏多。私ね……」

 私は……私は……どうなんだろう———————
 奏多のことは、正直言って好きってわけではない。
 好きか嫌いかと言われると、あんまり好きじゃない。
 でも、この告白を断れない自分がいる。

「私………………」

 何も言えずに戸惑っていると、奏多がゆっくりと私を離す。

「いいよ。今は何も言わなくて。俺、いい返事しか聞くきないし」
「え……」

 そんなの、どうしたらいいの……?

「だから、絶対惚れさせて見せるから、それまで、返事はお預けでいいよ」

 そう言ってニッと自信に満ち溢れたように笑う奏多。

「————っ……!」

 ドキッ。
 私は、奏多に背を向ける。
 きっと今、顔真っ赤だ。
 
「音羽……?」

 この人、自分の笑顔が凶器だってわかってない。
 きっと私は、この人に惹かれていってる。
 恋が、はじまりそうになってる。
 そんな気がした。
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