夢恋
* * * * *

 キーンコーンカーンコーン。

 チャイムが鳴って、授業が終わる。
 ようやく長い授業が終わった。
 これで部活に行ける。
 軽くため息をついて、教科書をカバンの中に入れる。

「ねぇ、音羽。今日も一緒に帰ろう」

 奏多が私の制服を軽く握って言う。

「………は?無理に決まってるでしょ」
「え。何で!?」
「むしろ、一緒に帰れると思ってたことにびっくりだよ」
「音羽、俺のこと好きって言ったじゃん」
「言ってないよ。嫌いではないとは言ったけどね」

 そう言うと、奏多は私のカバンをひったくった。

「えっ。ちょっ……何するのよ!」
「一緒に帰ってくれないとカバン返さないからな!」

 小学生か!!!
 私は、カバンを取り返そうとしてみるが、奏多の反射神経がいいのか私の動きが遅いのか、カバンに指一本触れられない。
 もう!いい加減にしてよ!
 そう思いながらもう一度腕を伸ばした瞬間、「神村」と声をかけられる。
 私と奏多はほぼ同時に声のした方を見る。
 そこには、うちのクラスの男子の学級代表がいた。

「何?新(あらた)ちゃん」

 私は、その人と意外と話していて、ちゃん付けで呼んでいる。
 本名は、平川(ひらかわ) 新。

「戸津(とつ)が呼んでる」
「え?戸津くん?」

 戸津くんこと戸津 信(まこと)は隣のクラスの学級代表で、かっこ良くて頭が良くて勉強はあんまり得意じゃないけど、優しいという、アニメのキャラクターみたいな人。
 正直、クラスが一回も一緒になったことがないし、小学校も違うから、話したことがない。
 何?何かした?私。
 私は、奏多に視線を移す。

「行ってくるね」
「…………あぁ…」

 奏多は少し拗ねたように返事をする。
 こいつ、面倒くさい。
 奏多を残して戸津くんのところに行く。

「えっと、何?」
「今日、部活終わった後、暇?」
「え………うん…」
「じゃあ、俺と帰ってくんない?」
「え………」

 え、やだ。
 奏多と帰るのも嫌だけど、話したこともないこいつと帰るのは、もっと嫌。
 何で私がよー知らんやつと帰らないといけないのよ。

「……今日は、九条くんと帰る約束をしてるので…ごめんなさい」

 そう言って頭を軽く下げる。

「ああ。いいよ。全然。ってか、神村さんって奏多と仲良かったんだ。意外」

 誰がいつ仲良いなんて言った。
 人の話をちゃんと聞け、イケメン。

「じゃあ、また今度」

 戸津くんはそう言うと自分のクラスに戻っていった。
 また今度って何?
 え、本当に何。いつ私があなたと仲良くするって言ったの。
 言ってないでしょ。

「………意味不明」

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