夢恋
私は、戸津くんと話し終わると奏多のところに戻る。
「カバン、返して」
「……戸津は、やめとけよ」
奏多は私の言葉を無視して話を続ける。
「は……?え…戸津くん?」
急な言葉に驚いて戸惑ってしまう。
というか、戸津くんに興味がない。なさすぎて困るってくらいない。
私は、軽くため息をついて、フルートケースを手に持つ。
「私、戸津くんに興味ないので」
そう言って歩き出すと、奏多は慌てたようについてきた。
「カバン、返してくれるの?」
横目で奏多を見ながら言うと、奏多は少し考えてから私にカバンを渡した。
「今日も、一緒に帰ろ」
「嫌です」
そう言って歩くスピードを速くする。
でも、懲りずについて来る奏多。
長い足をスライドさせて悠々とついてくるので、思わずムッとして廊下を走り出す。
「あっ。おい!!」
そんな声が聞こえるが、構わずに走る。
奏多と帰るとか、もう二度としたくない。
目立ちたくないとまではいかないけど、ああいうタイプの人とは関わりを持ちたくない。
あんなクラスの中心人物と関わったら、陰キャのくせに調子乗んなよとか言われるんだ。きっと。
乗ってねーよって話になるけど、弁解をするのすら面倒。
絶対に関わらないようにしないと…!!
そう思いながら走って音楽室までたどり着く。
「あっ。音羽先輩!!この前のイケメンの話聞かせてください!!」
音楽室に着くと、後輩たちが一斉に私を取り囲んできた。
「この前のイケメン……って、奏多のこと?」
「名前で呼んでるんですか!?」
「付き合ってるんですか?」
「……付き合ってる…?冗談でしょ。やめてよ。ないわ」
そう言いながらフルートケースを机に上に置く。
「それよりみんな。練習練習。楽器出して、チューニング!」
そう言うとみんなは渋々といった風に散っていった。
最近の子の想像力は恐ろしい。
付き合ってるとか冗談きつすぎる。
あの人と付き合うなんて、恐ろしくてできないし、まず付き合いたくない。
「音羽先輩!」
「え…何……?」
顔を上げると、後輩二人が笑顔で私の前に立っていた。
二人とも部活をサボり気味で、正直あまり好きじゃない。
一人はバスクラリネットを吹いている小林(こばやし)あゆちゃん。
もう一人はチューバを吹いている三上 凪(みかみ なぎ)ちゃん。
二人とも、普段から私に話しかけてくるタイプではない。挨拶も私からだし、基本的には挨拶以外交わさない。
「あの人、この前も一緒にいましたよね」
「付き合ってないんですよね?」
「うん…」
私が頷くと二人はパッと顔を輝かせた。
「じゃあ、私たちに紹介してくれませんか?」
「え……?」
………どうして私が嫌いな奴の恋の中を取り持ってあげないわけ?
絶対無理。
「ごめんね。それはちょっと…」
そう言うと二人は私を責めるような目で見る。
「好きなんですか?」
「好きじゃない。でも、私と奏多は仲良くないから無理なだけ」
「……ふーん。そうなんですか」
そう言い残して二人は不満そうな顔をして去っていった。
なにあの態度……!!
っていうか、どうして私が紹介する前提!?
練習しろよちょっとは。練習してないやつにそんな態度取られたくない!私より上手くなってからしろ。その態度は。
「……ってか、自分で話しかけなさいよ」
「…?どうしたの」
そう言って私に話しかけてきたのは、聖奈ちゃんだった。
「聖奈ちゃん……何でもないよ」
「そう?」
クリクリした大きな瞳に、キュッと引き締まった唇。
聖奈ちゃんはかわいい。女の子らしいし。勉強はちょっと苦手だけど。
そんな聖奈ちゃんと私は、まぁまぁ仲がいい。
正反対の二人。自分でもそう思う。
「えー。音羽って桜川(さくらがわ)と仲良かったんだ。なんか意外」
ビクッ。
声のした方を見ると、そこには窓からピョコっと顔を出してこちらを見ている奏多がいた。
「な……どうしているの!?」
「暇だったから、音羽がフルート吹いてるとこ、見学しようと思って」
何言ってるのこの人。
っていうか、あゆちゃんと凪ちゃんの視線が痛い。
「無理」
「そんなこと言うなって。桜川は音羽と違って女の子らしいじゃん。音羽も真似してみたら?」
クスクスと笑いながらそういう奏多。
「どうして好きでもない人の前で猫かぶらないといけないの?」
奏多のことを横目で睨みながらそう言うと、奏多が笑みを消して思い出したように言った。
「そうだ。俺まだ桜川のLINE持ってないから、今度ID教えてよ」
そう言って奏多は王子様スマイルをする。
うわぁー……かっこいいー……
「うん…!」
聖奈ちゃんは、嬉しそうに瞳をキラキラさせている。
この子、本当にかわいい。
「音羽も、スマホ買ったら交換しような」
「え…嫌ですけど」
「は?何で?」
「っ……うるさい!もう、おとなしく待っててよ!部活終わるまで!」
だんだんイライラしてきてそう言うと、奏多は不満そうな顔をしながらも「わかった。じゃあ絶対一緒に帰ってくれよ?」と言い残して音楽室を去っていった。
あの人、本当になんなの。
「カバン、返して」
「……戸津は、やめとけよ」
奏多は私の言葉を無視して話を続ける。
「は……?え…戸津くん?」
急な言葉に驚いて戸惑ってしまう。
というか、戸津くんに興味がない。なさすぎて困るってくらいない。
私は、軽くため息をついて、フルートケースを手に持つ。
「私、戸津くんに興味ないので」
そう言って歩き出すと、奏多は慌てたようについてきた。
「カバン、返してくれるの?」
横目で奏多を見ながら言うと、奏多は少し考えてから私にカバンを渡した。
「今日も、一緒に帰ろ」
「嫌です」
そう言って歩くスピードを速くする。
でも、懲りずについて来る奏多。
長い足をスライドさせて悠々とついてくるので、思わずムッとして廊下を走り出す。
「あっ。おい!!」
そんな声が聞こえるが、構わずに走る。
奏多と帰るとか、もう二度としたくない。
目立ちたくないとまではいかないけど、ああいうタイプの人とは関わりを持ちたくない。
あんなクラスの中心人物と関わったら、陰キャのくせに調子乗んなよとか言われるんだ。きっと。
乗ってねーよって話になるけど、弁解をするのすら面倒。
絶対に関わらないようにしないと…!!
そう思いながら走って音楽室までたどり着く。
「あっ。音羽先輩!!この前のイケメンの話聞かせてください!!」
音楽室に着くと、後輩たちが一斉に私を取り囲んできた。
「この前のイケメン……って、奏多のこと?」
「名前で呼んでるんですか!?」
「付き合ってるんですか?」
「……付き合ってる…?冗談でしょ。やめてよ。ないわ」
そう言いながらフルートケースを机に上に置く。
「それよりみんな。練習練習。楽器出して、チューニング!」
そう言うとみんなは渋々といった風に散っていった。
最近の子の想像力は恐ろしい。
付き合ってるとか冗談きつすぎる。
あの人と付き合うなんて、恐ろしくてできないし、まず付き合いたくない。
「音羽先輩!」
「え…何……?」
顔を上げると、後輩二人が笑顔で私の前に立っていた。
二人とも部活をサボり気味で、正直あまり好きじゃない。
一人はバスクラリネットを吹いている小林(こばやし)あゆちゃん。
もう一人はチューバを吹いている三上 凪(みかみ なぎ)ちゃん。
二人とも、普段から私に話しかけてくるタイプではない。挨拶も私からだし、基本的には挨拶以外交わさない。
「あの人、この前も一緒にいましたよね」
「付き合ってないんですよね?」
「うん…」
私が頷くと二人はパッと顔を輝かせた。
「じゃあ、私たちに紹介してくれませんか?」
「え……?」
………どうして私が嫌いな奴の恋の中を取り持ってあげないわけ?
絶対無理。
「ごめんね。それはちょっと…」
そう言うと二人は私を責めるような目で見る。
「好きなんですか?」
「好きじゃない。でも、私と奏多は仲良くないから無理なだけ」
「……ふーん。そうなんですか」
そう言い残して二人は不満そうな顔をして去っていった。
なにあの態度……!!
っていうか、どうして私が紹介する前提!?
練習しろよちょっとは。練習してないやつにそんな態度取られたくない!私より上手くなってからしろ。その態度は。
「……ってか、自分で話しかけなさいよ」
「…?どうしたの」
そう言って私に話しかけてきたのは、聖奈ちゃんだった。
「聖奈ちゃん……何でもないよ」
「そう?」
クリクリした大きな瞳に、キュッと引き締まった唇。
聖奈ちゃんはかわいい。女の子らしいし。勉強はちょっと苦手だけど。
そんな聖奈ちゃんと私は、まぁまぁ仲がいい。
正反対の二人。自分でもそう思う。
「えー。音羽って桜川(さくらがわ)と仲良かったんだ。なんか意外」
ビクッ。
声のした方を見ると、そこには窓からピョコっと顔を出してこちらを見ている奏多がいた。
「な……どうしているの!?」
「暇だったから、音羽がフルート吹いてるとこ、見学しようと思って」
何言ってるのこの人。
っていうか、あゆちゃんと凪ちゃんの視線が痛い。
「無理」
「そんなこと言うなって。桜川は音羽と違って女の子らしいじゃん。音羽も真似してみたら?」
クスクスと笑いながらそういう奏多。
「どうして好きでもない人の前で猫かぶらないといけないの?」
奏多のことを横目で睨みながらそう言うと、奏多が笑みを消して思い出したように言った。
「そうだ。俺まだ桜川のLINE持ってないから、今度ID教えてよ」
そう言って奏多は王子様スマイルをする。
うわぁー……かっこいいー……
「うん…!」
聖奈ちゃんは、嬉しそうに瞳をキラキラさせている。
この子、本当にかわいい。
「音羽も、スマホ買ったら交換しような」
「え…嫌ですけど」
「は?何で?」
「っ……うるさい!もう、おとなしく待っててよ!部活終わるまで!」
だんだんイライラしてきてそう言うと、奏多は不満そうな顔をしながらも「わかった。じゃあ絶対一緒に帰ってくれよ?」と言い残して音楽室を去っていった。
あの人、本当になんなの。