不埒な先生のいびつな溺愛
悩み出した久遠くんを見て、まさかと思ったが、私は恐る恐る聞いてみた。

「え、久遠くん、もしかして、K大受ける気になったの?」

「……悪いかよ」

それって私が勧めたから?と聞きたかったが、それは聞かないことにした。

それでも久遠くんがまた勉強を始めるのなら、私は嬉しい。受験生として一緒に頑張れるし、何より久遠くんだって今までずっと頑張ってきたのだから、ベストを尽くしてほしいと思っていた。

「ね、もうすぐ夏休みでしょ?私は毎日図書館で勉強しようと思ってるんだけど、久遠くんも来る?一緒に勉強しようよ。迷惑じゃなければだけど」

「行く」

「やったあ、じゃあ、頑張ろうね」

自動的に本のやりとりはこれで終わることとなったが、私は夏休みも久遠くんに会えると思うと、胸が踊った。

今までずっと感じていたはずの勉強へのストレスは、自然と軽くなっていった。

久遠くんとは文系理系で分かれているし、なにより最初から成績にも大きな差があるから、ライバル視などする必要もなく、彼が傍にいることはストレスにならなかった。

それに久遠くんといると、素直な自分でいられる気がした。

私にとって、久遠くんはとっくに特別な人になっていた。

彼のことが大好きだった。
< 109 / 139 >

この作品をシェア

pagetop