不埒な先生のいびつな溺愛

この桜井は、宣言どおり、頻繁にこのバーにやってくるようになった。

不思議なことに、久遠の感じていた彼への嫌悪感は次第に薄くなっていき、店に来た際には「よぉ」と声をかける程度の間柄になった。

桜井に対して苛立つことは頻繁にあるのだが、久遠の態度について桜井が腹を立てることはなく、それが久遠を安心させることとなったからである。

しかし、桜井は久遠に良い影響を与えたとは言い難い人物だった。

「久遠くんって寡黙だねー」

胸の谷間が見えるほどに緩い、白いセーターを着た女はそう言って、カクテルを作る久遠のことを上目遣いで見つめた。

谷間には金のネックレスのチャームが乗っかっている。

桜井はそれをその女の谷間の中に押し込む遊びをしながら、久遠に言った。

「おーい久遠、コイツがお前にお持ち帰りされたいってさ」

桜井がバーに連れてくる女のことを、久遠は鬱陶しいとしか思ってはいなかった。

しかしその女の色めき立った目を見ると、彼女と一晩共にすることにはメリットがあると考えるようになった。

美和子と会えなくなってから、積もりに積もった欲求を、彼はどこにもぶつけることができずにもて余していたからだ。

高校時代は美和子と会って話しているだけで満たされていたものが、今は何一つ満たされない。
女を抱くことでそれが満たされる気がした。

「別にいい。今夜でも」

久遠の返事に、女はさらに酔った瞳をうっとりと潤ませた。
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