不埒な先生のいびつな溺愛
女を抱くことで欲求を満たすということを覚えた久遠は、それからは頻繁にそういうことをするようになった。

巧みな話術がなくとも、ルックスだけで十分だった。

バーテン姿で酒を出したとき、潤んだ瞳で見つめてくる女を見つめ返せば容易なことだったのだ。

「そういや久遠さ、なんで高校のとき受験やめようとしてたのに、K大受けたんだよ。俺覚えてるぜ、大学はどこでもいいっつって、本読んでただろ。それがある日突然勉強し始めたじゃん」

桜井がそう尋ねた。彼の隣には、昨夜久遠が抱いた女も同席していた。

「……行く理由ができた」

「だから、それは何だったんだよ?」

「言わねえ」

「え〜知りたーい」

女の言葉は無視をした。美和子との思い出を、この女に話すなど、思い出が汚れる気がした。

大学へ来ても意味はなかった、そう思っては、久遠はやるせなくなった。

美和子がいなければここへ来た意味はなかったのだ。美和子以外の女など、彼女の代わりにすらならない。女を抱いては虚しくなるばかりで、むしろ美和子への欲求は高まっていた。
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