不埒な先生のいびつな溺愛

彼は卒業まで、このバーテンダーのアルバイトを続けたが、その四年間は久遠にとって何も生み出すことはなかった。

教員免許を取得したが、久遠自身、それを使うことは一生ないだろうと予想した。

教師に向いていると言った美和子のことを恨む気持ちもわずかにあった。それは主に、美和子がそばにいないことに対してのものである。

どこかへ行ってしまったくせに、教師に向いているという言葉だけを自分に残していったこと、それにずっと縛られ続けた四年間、全部美和子のせいだった。

久遠は卒業して実家に戻り、塾講師として働き始めたが、彼は子供にも、その父兄にも、興味を持つことはできず、自分自身が必要性を感じていない受験について、彼らを応援することもできなかった。

苦情を集めたわけではないが、久遠は塾講師として人気はなく、信頼もなかった。

この頃から、久遠は美和子を思い出さなくなった。

日常のストレスが、美和子への想いでは払拭できなくなっていたのだ。

彼女との思い出に浸ることは何度もあったが、それによって救われたことなど、今まで一度もなかったと気づいた。

彼女に会えなければ何の意味もない。彼は、やっとそう気づいたのだ。
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