不埒な先生のいびつな溺愛
理解が追い付かないが、私は初めて、先生に求められる言葉を言われているのだと自覚した。

何がきっかけだったんだろう。

眠る前に、先生を抱きしめたこと?

さっき、再会してから初めて彼を“久遠くん”と呼んだとき、久遠くんは私に「ずっと会いたかった」と言った。
何度も何度も、私にすがりつくように抱き締めてきた。

私が彼の中に久遠くんを探していたように、もしかしたら、先生もずっと私を探していたんじゃないだろうか。

「久遠くん……」

試しにまた、ポツリと彼をそう呼んでみた。

久遠くんはやはり、切なそうに顔を歪めて、今度は私の髪に触れてくる。

「美和子……」

先生の手は震えていて、それでも私の髪をサラサラと撫でている。
こんな風に触れられたのは初めてだ。

気持ちよくて目を閉じた。

すると、また久遠くんの余裕のない息づかいが聴こえてきて、私はすぐに目を開けた。

「なあ、美和子っ……俺……」

「ん?」

「お前のこと、一度だけでいいから、抱きたい」

そう言われた瞬間、私は反射的に体を起こしていた。

私に触れていた久遠くんの指先も、その衝撃で弾かれ、それがきっと私の拒否の意思表示だと思ったらしい彼は、露骨に傷ついた顔をした。
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