不埒な先生のいびつな溺愛
言った後、久遠くんは私と目を合わせようとしなかった。

いや、合わせられなかったのだと思う。真っ赤になって目を泳がせながら、彼は「いや、悪い、そうじゃなくて、」と慌てて否定をし始めた。

「抱きたい」と口に出したことをすぐに後悔しているように見えた。

でももし、思いつきじゃなくて、久遠くんが本当は、ずっと私を抱きたいと思っていたのだとしたら……。

私はそう考えると、体の芯から熱くなって、嬉しさが込み上げてくるのが分かった。
私はずっと久遠くんに、こんな風に求められたかったのだ。

「いいわけないよ、そんなの。私は久遠くんと付き合ってもいないのに」

「分かってる、悪い、忘れろ」

「……ふうん。ひどい。私と付き合うっていう選択肢はないんだね」

私が不満げな視線を送ると、彼は鳩が豆鉄砲くらったような顔で私を見た。

「……………………………だって、お前、この前話してた男と付き合ってんじゃねえのかよ」

「伏見さんのこと?付き合ってないってあのとき言ったじゃん」

「でも家に行ったって言っただろっ」

「家に行ったからって付き合ってるとは限らないでしょう?ちなみに、そのときも何もしてないから。私は久遠くんとは違うもん。すぐにそういう関係になるわけじゃない」
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