不埒な先生のいびつな溺愛
「……私の気持ちだって、考えたことあるの?」

「は?」

「大学が別々になっちゃって、すごく寂しくて、何度も忘れなきゃと思ったのに、忘れられなくて。それでも十二年も経ってから、また会えることになって。……運命かもって思った。でも実際に会ってみたら、私のこと女として見てくれないし。綺麗な人を手当たり次第に家に連れ込んで、私には見向きもしなかったじゃない。いつも私は置いてきぼりだったよ。私だって、ずっと寂しかったよ!」

私が言葉を紡げば紡ぐほどに、久遠くんの表情は変わっていった。

暗い小さな部屋に何年も閉じ込められていたのに、外の世界に小さく細く目を輝かせていくように、瞳の中に光が戻っていく。

私が嘘を言っているんじゃないか、と、彼は目を開いたまま、首をフルフルと横に振った。
嘘じゃない、と、私は少し不機嫌な表情をつくった。

「……おい。言っとくが、今の俺は、お前の言うことは言葉どおりにしか受け付けられねえぞ。……勘違いしそうだから、やめてくれ……」

「だから、勘違いじゃないよ」

「……じゃあ、何。美和子、俺と付き合ってくれんの?」

さっきから私はずっとそう言っていたはずだ。

私は迫ってくる久遠くんの頬に触れた。

「うん」

彼の頬に触れていた私の手に、彼の手も重ねられた。
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