不埒な先生のいびつな溺愛
一時間半ほど新幹線に乗ると降車駅に到着した。
ロッカーに荷物を詰めて、そこからさらにローカル線で二駅移動する。降りてすぐのお花屋さんで、お供えの花を買った。

ここが久遠くんのお父さんの実家があるという田舎町。身軽になった私たちはふたりで、お寺までの道のりを散策した。

「叔父さんのお家には寄らなくていいの?」

「いい。俺とあの人は、ほとんど関わりはない」

たしかにお葬式のときも叔父さんのご一家は直前まで東京へはいらっしゃらなかったようだから、蜜な親戚付き合いをしてこなかったのだとは予想がついていた。

今回も大型連休だというのに、叔父さん家に泊まる算段はとくになく、一泊二日のビジネスホテルだ。
でも、別にいい。私と久遠くんがいれば十分だ。

「綺麗なところだね」

駅からずっと続いている菜の花畑を横目に、私は一歩一歩、のんびりと歩いた。久遠くんはそれに合わせて、たまに止まってくれたりする。

「……今までそんな風に思ったことねえが、美和子がいると違って見える」

彼の無意識な感想に、私は感動した。

「ほんと?」

「お前となら、どこへでも行きたい」

新幹線の中で私が言った「色んなところに行こう」という提案に、彼はやっと返事をしてくれた。
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