不埒な先生のいびつな溺愛
「……お前、ほんとに幸せ?」

久遠くんは急に真顔になってそんなことを尋ねてきた。また彼の不安定期がやってきたのだろう。

何度も何度も、私も久遠くんが好きだと伝えてきたつもりなのに、彼はすぐに弱気になる癖がある。

「もちろん。久遠くんが隣にいるだけで幸せだよ」

「お前、俺のどこが好きなの」

「えー、本の虫なところとか、気難しいところとか、ワガママで、すぐ早とちりして一人で結論出しちゃうし、それにあと……」

「それ全部悪いところじゃねーかよ」

「そんなことないよ。そういうところも全部好きなんだよ」

聞いてきたくせに、やっぱり彼は照れてしまった。

「物好きなんだよお前は。俺のそういうところが好きだっていう奴はいねーよ。離れていくんだよ、こういう俺からは。……お前だけなんだよ、そんなの。美和子……お前だけ……」

付き合って三ヶ月。
彼が自分自身に感じているもどかしさや、隠していた孤独への寂しさも、私は徐々に分かってきた。

でも久遠くんだって、物好きなのだ。

だって彼は、私だけに優しい。それも思いっきり度を越えているほど。

出会ったタイミングと、時間の流れと、二人の距離。それがちょうどよく私たちを結びつけてくれた。たったそれだけのことなのだ。
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