不埒な先生のいびつな溺愛
私は自分の『美和子』という名前がずっと嫌いだった。
高校時代は特に、周りの子はもっと真新しいお洒落な名前をしていた。自分の、この『み』に『わ』に『こ』の並び方の名前は、とても古くさい気がした。
高校時代の『久遠くん』には『秋原』と呼ばれていた。それなのに、再会した久遠先生は、『美和子』と呼ぶ。
この年になれば自分の名前にはさすがに慣れたものだが、久遠先生が『美和子』と言うと、『美和子』という名前は艶っぽく、古風な色気を纏った響きに聴こえた。
今までの恋人に呼ばれていた『美和子』とは全然違った。他の人が呼ぶと、もっと子供っぽい響きになる。他の人は『わ』をしっかり発音するからだ。先生の『美和子』は、『み』だけきちんと発音して、『わ』は流すだけ、そして『こ』もしっかりとは発音せず、喉がコツンと鳴る響きだけを残していた。
なんて色っぽい発音だろう。
先生に『美和子』と呼ばれるたびに、体の芯が熱くなっていく気がした。